· 

支援事例 下請事業の単価引上げにより赤字脱却を目指す後継者の価格交渉サポート

荒谷 司聖

企業概要

 株式会社Aは食品の梱包材や紙製の陳列用什器を製造する事業者です。内職さんへの業務委託なども活用しながら、速く高品質なサービスを提供しています。

 エンドユーザーに直に納めることもあれば、本事例のように取りまとめ役となる印刷会社などの企業を間に挟むこともあります。そうした場合、エンドクライアントの希望を受入れつつ、当社にとってのお客様である印刷会社のリクエストにも応えなければなりません。

 本事例は品質を重視するエンドクライアントととにかく安く仕上げたい元請企業に挟まれて苦悩する下請企業が目指す時間単価の引上げを支援したものです。

支援内容

事業支援として次のことを行いました。

  1. 1. 同業他社の状況確認を行いました。異なる元請けから同種の仕事を請負っている同業者に探りを入れました。結果、当社に比べ1割以上高い単価で業務を受注していることを確認しました。
  2. 2. 福利厚生なども含めた当社の時間当たり人件費を算出しました。すべての工程を社内で行うと大幅な赤字になる、到底受け入れられないような条件で引受けてしまっている現状を数字で確認しました。
  3. 3. 契約通りの条件(すべて内製)では2倍以上の金額をお支払いいただかなければならない状況の中、現段階では暗黙の了解事項となっている「再委託」が公式に許可されれば、先方の希望する金額に近づけることもできます。再委託を活用した場合の具体的な金額を添え、提示しました。※当社からの「再委託禁止」はエンドクライアントの要望。元請企業にはコダワリがない可能性がある。
  4. 4. 労働集約的な当社の事業は毎年10月の最低賃金引上げに大きく左右されること、その都度価格見直しの場を設けていただきたいことを元請けに伝えました。万が一、下請法違反ともなれば却って迷惑をかけてしまう可能性があることも申し添えました。

結果と今後の展開

 1回の交渉では目標としていた金額(1,200円/h)に届きませんでしたが、当初980円/hだった時間単価は1,050円/hまで引上げられました。なお金額以外の目標である「再委託許可の明文化」も引き続き交渉していきます。